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大阪高等裁判所 昭和30年(ラ)141号 決定

抗告人 山田一彦(仮名)

右法定代理人親権者父 山田次郎(仮名)

同毋山田ふみ(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告理由は、抗告人は昭和一八年○月○○日父山田次郎と毋山田ふみとの間に出生したもので、出生当時家業の○○商が忙しく父次郎から抗告人の出生届の依頼をうけた伯父の山田一郎が勝手に抗告人の名を一彦と命名して届け出たものである。

抗告人は出生以来虚弱で、病気の絶え間がなく医者と相談しても医学上手の施し様がないというので、姓名判断を受けた結果抗告人の名が悪く一彦と称していては二年の寿命がないとのことで、約一年前から祖父正之助の名の一字を取り正男と呼称し又はぼんとも呼称して今日に至つている。従つて抗告人の名一彦は父毋の意思にそわない名であり、姓名判断の上でもよくないので、抗告人の名を正男と変更するについて許可を求めるものであるが、右申立を理由なしとして却下した原審判は失当であるから、これを取消し名の変更許可を求めるというにあつて、抗告人提出にかか各証明書および原審における山田次郎、山田ふみに対する審問の結果によると、抗告人の名一彦は父の次郎から抗告人の出生届の依頼を受けた伯父の山田一郎が命名したもので、姓名判断上凶名であること、抗告人が出生以来虚弱で病気にかかり易い体質であること、抗告人の両親において抗告人の名を正男と変更することを希望していることが認められるが、これらの事情だけでは抗告人の名を変更するについて正当の事由があるものとはいわれない。従つて抗告人の本件申立なきものとして却下した原審は相当であつて、本件抗告はその理由がないので、これを棄却し、抗告費用の負担につき民訴第八九条を適用し、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 吉村正道 判事 大田外一 判事 金田宇佐夫)

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